1章

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からかうか、呆れるか。 どちらかを反応として返されると思ったが、 「……これからどうします?」 右京は何も言わず、今後の方針を聞いた。理事長も頭を切り替えて考える。 「問題を解決する上で最も理想的なのは、原因を直接取り除くことだが、今回は少し遠回りをする必要がありそうだ」 自分たちは、いわば奇襲を受けた身だ。がむしゃらに攻めていては道を拓けない。 考えるべきは生きること。そして生かすこと。 「ひとまず、この学園を救護施設として整備する。生き残った人々を守る体制を整えないことには、何も始まらない。 その事実を、どうやって市民に伝えるかは……まあ、追々考えるとしよう」 大声で叫ぶという、原始的な手しかないかもしれない。 「それが終わったら、この森の処理だ。確か【嘲ル森】とか言ったか」 「それは外の連中が何とかしてんじゃないスか?」 「それはそうだが、そんな脆弱な檻で安心するほど、向こうも甘くないはずだ。内側から動くことも必要だろう」 『向こう』と表現したのは、相手がタナトス一人でない可能性を考えたからだ。 王族が彼に抱き込まれたのではなく、自ら協力しているケースも考えられる。その場合、理解不能と言わざるを得ないが。
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