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「無論、これは私たちの行動だ」
結界を形成する魔力の濃度を確認しつつ、目の前の青年に言う。
話が自分に向いたからか、彼は背筋を伸ばした。いつもそうなら良いのだが。
「君は好きなように動くといい。ただ、先に学生寮に行って、学園への避難要請を頼む」
「……了解」
一拍置いて、固い顔で頷く右京。こちらの下心には気づいているだろう。
しかし、彼が愛している女性も、せめて「行ってらっしゃい」くらい言いたいはずだ。
(……ちょっと老婆心が過ぎるかな?)
右京の左手薬指に輝く、銀色の指輪を見ていると、
分厚い大扉が開き。
けたたましく禍々しい、およそ生物のものとは考えがたい絶叫が、飛び込んできた。
「あーもう、うっさいなぁ」
入室してきた、作業着姿の三人の内の一人──ラムダが、ソレの細い首を締める。
「取り込んでるとこ申し訳ないけど、お届け物よ」
続けて、冗談めかしつつもまったく笑っていない(どころか不快そうな顔の)ファイに、
「……ずいぶん趣味の悪ぃギフトだな」
右京が顔を引きつらせて応じた。
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