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全員の視線が集まっているのは、デルタが両手で拘束する、何か。
全身が黒い羽毛で覆われている。一対の翼と嘴から考えても、鳥なのは間違いない。
しかし、ソレの外見は、鳥と呼ぶにはあまりにも異様だ。
まず、眼球が両方とも白濁している。ラムダに首を締められながらも、懸命に開こうとする口からは、小さな牙が見え隠れした。
固そうな鱗を纏う脚も、小さめの体に不釣り合いな、巨大な鉤爪を生やしている。
何より、もがき方が尋常ではない。この場の全員に対して、悪意や敵意と呼ぶのも生ぬるい、強烈な激情を抱いているのが窺えた。
「……カラスかな?」
自分で言っておきながら、まさか、と否定したくなる。
しかし、電灯を受けて黒々と光る羽毛は、カラスのそれにしか見えないのだ。
「結界が展開する直前、数羽の群れが敷地内に侵入。この一羽以外は殲滅を完了した」
「こいつうるさいし、殺っちゃっていいスか?」
冷静に報告するデルタの横から、ラムダが軽い口調で尋ねる。
右京とファイは顔をしかめるが、理事長は気にする様子も見せず、奇怪な鳥をまじまじと観察した。
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