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変異を引き起こした瞬間の苦痛は、言葉で表現できないほど凄まじい。思い出すだけで背筋が凍る。
そんな痛みを、何の罪もない数百万もの人が味わい、かつての心も尊厳も失ってしまった。
ひどいとしか、言い様がない。
「……この鳥──変異獣とでも仮称しようか。これは群れで飛んできたと言ったね?」
気を取り直して、デルタに質問する。
変異獣を押さえ込みながら、首を縦に振る彼に続き、ファイが証言した。
「群れって言っても、四羽くらいよ。特に連携してたわけでもないし」
「私が気になっているのは、協力していたか否かじゃない。そいつらが一緒に行動できていたという事実だ」
相変わらず、魔法陣が示す現状に異常はない。確認してから続ける。
「魔流毒で変異した個体は、目の前の生物を見境なく襲う。共食いをしなかったのはおかしい」
「そういえば、そんな実験もあったわねぇ」
「さすがファイおばさん! 長く生きてると色々なことを知ってるんですね!」
「ミンチにするわよ、クソガキ!」
実に不毛な喧嘩だが、こんな時でも普段通りに動けるのは、ある意味では羨ましい。
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