1章

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ぎゃいぎゃい騒ぐ男女を尻目に、右京が眉間をつまんだ。 「つまり、連中には知能があるってことスか? 共食いしても意味がねぇ、って判断できるくらいには」 「そうかもしれないし……共食いしないよう、命令でも植えつけられたのかもしれない」 「……胸くそ悪ぃ」 吐き捨てる男の言葉には、理事長も賛成だ。しかし、いちいち口に出している暇はない。 デルタもそう思ったようで、静かに一歩前に出た。 「指示を」 「……ああ」 それまで考えていたプランに、若干の修正を加える。 変異獣が共食いしないということは、彼らの標的が、まだ変異していない生物に絞られたことを意味する。 すなわち、運よく塔の禁術を逃れても、変異獣に襲われてしまう可能性が高いのだ。 「学園を救護施設とする案に変更はないが、教職員だけでは対応が大幅に遅れてしまうはずだ。 少々心苦しいが……学園の整備を生徒が、近隣への避難の呼びかけを教職員が、それぞれ請け負う形で進める」 言いながら、胸が暗くなるのを感じる。 一体どれだけの生徒が動けるか、まったく予想できなかった。
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