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「では、各員行動を開始。連絡手段に乏しく、増援も呼べない状況だ。よく考えて行動してくれ」
「ボクも街行って斬り殺したいんですけど~」
「不謹慎なこと言ってないで、さっさと行くわよ、クソガキ」
「いでででで! 痛い、痛いですってば、おばさん!」
ぼやくラムダの耳を引っ張り、部屋を後にするファイ。デルタも頭を下げて退室する。
「オレも出ます」
「……信じているよ」
「気張らず行きましょうや」
軽やかに言った右京は、普段のたるみ具合からは想像もつかない俊敏な動きで、ドアの向こうに消えた。
あんなに頼もしい男だっただろうか。苦笑しながら魔法陣の様子を再確認する。
相変わらず、敷地内と学生寮に異常はない。
「……」
中心街に魔流毒が散布されたことを知っているか否かは、今後の活動に大きく影響する。
指示の校内放送と合わせて、生徒と職員に伝えるべきだが、本当に大丈夫だろうか。
そうして悲しみに暮れるであろう人々を、しっかりフォローできる自信がない。
"彼女"のように他者を支える自分を、イメージできない。
「……時音」
爪が肌に食い込むほど、拳を強く握りしめる。
薬は飲んだはずなのに、息苦しくて仕方なかった。
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