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慎士は、背筋をぞくぞくと駆け上がる感覚に襲われる。
(こいつら……)
自分は、託された。
一身に、というわけではないけれど、この場の四十人弱の気持ちを、託してもらった。
感激に胸が震える。良いクラスなのは知っていたが、ここまで級友を認められる者が集まっているとは、正直思っていなかった。
言葉と笑顔で感謝を伝えたいのに、体が言うことを聞かない。
立ち尽くす慎士の横を、一組の男女が通りすぎる。木宮と桜田だ。
「……すまない」
「ちゃんとエスコートしろよ、宮ッチ。怪我させんのもご法度だからな」
「分かっている」
「ありがと……ごめん、あたしたちだけ……」
「桜田まで謝んなっつーの。悪ぃと思ってんなら、街の連中を一人でも連れてこい」
「……うん!」
瞬き一回。桜田の表情から、迷いと罪悪感が吹き飛んだ。
そのまま木宮と連れ立って、こっそり教室を出ていく。他の教員や生徒に見つからないようにするためだろう、中腰だった。
足音も立てずに二人が消えた後、宍戸がゆったり立ち上がり、関に歩み寄る。
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