1章

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電灯が一切灯っていない廊下は、暗さ以上に静けさに満たされていた。 音を立てれば一発でアウトだ。上履きを脱ぎ、四つん這いで冷たい床を進む。 (誰も来んなよ~……) 教室や職員室での待機が命じられたのだから、人気がないのは当然だが、誰も現れない保証はない。 祈る内に、生徒用玄関に辿り着いた。先に行った三人の姿はない。 しかし、行き先は分かっている。自分の下駄箱からスニーカーを取り出し、北校舎へ走り出した。 (グラウンドは教室から丸見えだしな) 多少遠回りでも、人の目が少ない北門の方が安全だ。彼らもそう考え、教員用玄関に向かったのだろう。 高鳴る心臓を、努めて落ち着かせて走る。 緊張のせいか、渡り廊下が異様に長く感じたが、無事に到着することができた。 しかし、そこにいるのは宍戸だけだ。桜田と木宮の姿が見えない。 「二人は?」 開口一番、背後を振り返りながら小声で尋ねる。受付は空っぽのようだ。 「先に行った」 「まあ、オレらん中で一番街に出たがってたの、桜田だしな……」 教室での彼女を思い出す。不安そうに下を向く姿は、まったく桜田らしくなかった。
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