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「こう言ってはなんだが、君には守るべき人も、守るべきものもないのだろう。なのに、どうして街に出る?」
慎士に追いつく速度で走っているにもかかわらず、宍戸の声は涼しげだ。
構わず、植物園を右手に眺めつつ、ひたすら地を蹴って猛進する。
「住民を避難させたいから、と答えるのなら、今すぐ教室に戻ることだ。それだけなら街に出る必要なんてない」
「……」
「それとも、ハディスを止めるためかな? だとすれば、少々お節介が過ぎると思うが」
「ごちゃごちゃうるせぇな。何でもいいだろ」
素っ気なく突き放すと、宍戸は追及してこなかった。思いの外素直だ。
素直すぎて、こちらの調子が狂うくらいに。
「……ゲームかもな」
「何だって?」
「魔力を使い果たすまでに、ユーリを止められるかどうか……そういうゲームみてぇなもんかもしんねぇ、っつったんだ」
「腕のいい医師を紹介してやる。今度、脳細胞を洗浄してもらいたまえ」
「オレのゲーム脳見くびんなよ。ちょっとやそっとじゃ落ちねぇ頑固汚れでいっぱいだぜ」
胸を張ることじゃないだろう、とでも言いたげに吐息をつく宍戸。
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