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長く、ため息をついてから顔を上げる。
どこを見て話せばいいか分からないから、視線は適当な方向へと泳いだ。
「……怖くねぇって言ったら、嘘になると思う」
タナトスだって、確固たる意志を持った命だ。オレが守りたい人たちと、何の違いもない。
高い実力や残虐性はもちろん、本気で──本当に本気で戦わなければならない現実も、恐ろしいったらない。
耐えられるかどうか、見当もつかない。
「でも、だからって躊躇う余裕なんてないし、何もしないとか論外だろ?」
何もできなかったクリスマスの夜とは違う。今のオレには、何かしら"できる"。
なら、動かないなんて選択は許されない。
たとえ、もう二度と立ち直れないくらい、深く傷ついてしまったとしても、
「みんなを守って……先を生きたいからな」
みんなと一緒に生きる。
その最終目標さえ忘れなければ、きっと大丈夫だ。
『……そこまで言うなら、問題ねぇか』
「フェルムの方こそ、覚悟はいいか?」
『抜かせ、ガキ』
言葉は悪いが、裏側には楽しそうな色が含まれていた。
もし兄がいたら、こんな感じで会話していたんじゃないかと、ふと思う。
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