1章

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しかし、この身に迫る脅威が彼らだけではないことを、優は確信していた。 (きっと、地上から援軍が来るはずだ……従順で厄介な、ケダモノ集団が) リグベルの『緑の牢獄』という発言も合わせれば、ヴェッテンハイム家とフォーラット家、双方の禁術が発動したことは、容易に想像できる。 前者はともかく、後者はマズイ。地上は今頃、パニックに陥っていることだろう。 フォーラット家が保管していた禁術は、範囲内の生物を全て、術者の兵隊に変異させてしまう代物なのだから。 (おまけに、街の外にいる人々は恐らく、【嘆ク山】まで発動されたことには気づいていない……) 先に森が発生し、街を外界から切り離したのだから、当然といえば当然だ。 が、内情を正しく理解していないのは、好ましいとは言えないだろう。 (まあ、団長なら全てお見通しのような気もするけど) 自分を内部調査に送り込んだ張本人の、いかめしい仏頂面を思い浮かべる。 外のことは、彼を筆頭とする仲間たちに任せて、今は目の前の事態に集中した方が良い。 考えをまとめ終えてから、ようやく意識を現実に戻す。
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