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今の優は隙だらけだ。にもかかわらず、兵士は誰一人として動かない。
剣やらライフルやら、各々の武器を手に、悠然と立つ黒衣の男を睨むばかり。
「来ないのですか?」
「ふふふ……あなたはもしや、我々があなたを殺すためだけに集結しているとお思いですかな?」
面倒な男だ、と思う。質問に質問で返していては、いつまで経っても話が進まない。
自分の優位性を示したいなら、もう少し手段を考えるべきだ。
「我々は交渉するために来たのですよ。史上最年少で、王族特務を請け負うだけの地位を手にした実力者である、あなたと」
「……何の交渉か知りませんが、諦めた方が賢明ですよ。私は所詮、末席を汚している程度の若輩ですので」
「ご謙遜を」
大げさな身振りを交えて、いやらしい笑みを浮かべたリグベルは、勝手に提案した。
「全てが終わったら、今回の件にフォーラット一族が関わっていないことを、あなたの口から団長殿に報告してほしいのです」
「……もう少し詳しく、説明を願えますか」
「いいですとも」
笑顔は相変わらず、ニヤニヤと意地汚い。つくづくセリフと表情が一致しない男だ。
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