1章

37/43
前へ
/639ページ
次へ
「あなたも既に勘づいているでしょうが、我々は中心街に魔流毒を散布し、民間人を変異させました。我々とヤツらの力で、この街の住人を一掃します」 「……それで?」 「続いて、魔流毒の痕跡を全て抹消します。少々骨の折れる作業ですが、時間ならいくらでもありますから、ご心配には及びません」 「……その後は?」 「あとは簡単ですよ。あなたと我々の証言で、ヴェッテンハイムに全てを負っていただくのです。 【嘲ル森】も魔力供給所も、元はあの一族が所持していたもの。筋が通っている以上、世間は認めるしかありますまい」 長い説明を終えて、不気味な含み笑いをこぼす巨漢。 彼の言葉を全て、努めて平坦に受け止めて、優はおもむろに口を開いた。 「……街の住人を排除する、とおっしゃいましたが、正気ですか? 桜峰市の昼間人口を、把握していないわけではないでしょうに」 一千万、とまではいかないが、数百万人規模なのは確かである。 中心街の住民を変異させたとはいえ、殺さなければならない者の方が、まだまだ多い。 おまけに、桜峰魔術師学園という魔窟(あくまで優の私見)は、恐らく手付かず。余裕を見せすぎではないだろうか。
/639ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51547人が本棚に入れています
本棚に追加