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「引き受けて損はないと思いますよ? 報酬は十二分に払いますし、身の安全も保証いたします」
「でしたら、今まさに脅かされようとしている我が身を、どうにかしていただけませんか?」
両手で周囲一体を指し示し、苦笑してみせる。
煽られても、リグベルの不遜な態度は崩れない。忍耐力はあるようだ。
「それに……あなたのご家族や友人の皆様も、手厚く保護させていただきますよ?」
「何をおっしゃるかと思えば。友人ならいざ知らず、私には家族など……」
「お忘れのようですなぁ。あなたは飼い犬で、我らが当主は飼い主ですよ?」
一言発するたびに、微笑みがどんどん黒く汚れていく。
「ペットに可愛い息子がいることくらい、知っていて当然でしょう」
「……」
す、と心が冷める。
仮面のような微笑みが──どうにか保っていた人らしさが、呆気なく溶け落ちていく。
「……では、時間もありません。答えをお聞かせください。返答は『イエス』のみで結構です」
無表情をどう捉えたか、リグベルは嬉々として尋ねてきた。
「我々に協力してくださいますね? 木宮殿」
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