プロローグ

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束の間、和やかな雰囲気を共有してから、フェルムが切り出した。 『よし……じゃあ、ひとまずオレのところまで来い』 「オレのところ?」 『木に背中を向けて歩け。いずれ着く』 (木って……) 小高い丘の上を見上げる。四方に大きく枝を広げる、立派な木が見えた。この精神世界の中心にそびえる巨木だ。 あれだろうか? 他にも木は生えてるけど、目印になりそうなものじゃないし。 判断し、背を向けて歩き出す。フェルムが注意をしてこないところを見ると、こっちで間違いないようだ。 まっすぐ進む足元で、穏やかな風が小さな葉を揺らしている。 「……あ」 一分もせず、銀色に輝く物体が見えてきた。 巨大な竜の頭骨が、大口を開けたまま、半ば地面に埋まっている。 緑の合間に見える色や質感は、骨ではなく鉄だ。どこからともなく降り注ぐ日差しを、重く反射している。 "オレのところ"というのは、あの口腔から伸びる階段を下りた先だろうか? 微妙な傾斜に踏み込もうとしたオレは、 『そこで止まれ』 「へ?」 唐突に待ったをかけられ、半歩だけ踏み出したところで止まった。
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