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直後。
彼を除く全員が、一瞬で粉微塵に刻まれ、血飛沫を撒き散らした。
石造りの床に、瞬く間に真紅の湖が出来上がる。
そこに、ぼちゃぼちゃと音を立てて落下する肉片。一拍遅れて、濃い血の臭いが辺りを包む。
「……な……?」
闘志と余裕に満ちていたリグベルの顔が、飛散した鮮血と疑問符で埋め尽くされた。
何が起きたのか、把握すらできていないようだ。
「……何故あなたを殺さなかったか、分かりますか?」
永久凍土と化した心が、言葉と眼差しを冷却する。
きっと、まったく生物らしくない表情になっているのだろう。全身に血を浴びた優は、確信しながら言い放った。
「あなたや当主殿には……生き地獄を這いずり回る義務があるからです」
街一つを壊滅状態に追いやった、極悪非道の殺戮一族。
そんな汚名を背負い、非難と罵倒に溺れ、死ぬ権利さえ剥奪された生を味わってもらうまで、彼を死なせるわけにはいかない。
「ご同行願います。ああ、返答は『イエス』のみで結構です」
「ッ……ぁ……!」
自身の未来に絶望してか、射るような眼光に萎縮してか。リグベルは壁際まで後ずさり、唇を震わせる。
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