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しかし、優は歩み寄れなかった。
彼が入ってきた分厚い鉄扉を破壊し、筋肉の塊のような生物が転がり込んできたから。
そちらを見た途端、優は目を細めた。
「……援軍の到着ですか」
彼の黒い瞳に映っているのは、ヒトの形をした何か。
盛り上がった筋肉。鋭い牙が並ぶ大口。白く濁った両目。変異し、かつての面影を失った人間ないし魔族だろう。
扉を破った者の後ろにも数体、似たような外見の怪物が続く。これからも続々と侵入してくるに違いない。
「は……ははははは!」
笑い声に振り向く。
全身に部下の血を浴びたリグベルは、壁に備えつけられた階段を上がり、部屋の二階部分に到達したところだった。
「殺せ! 我が一族に仇なす害虫を、何が何でも生かして帰すな!」
届くはずもない命令を残し、ドアの向こうに消えた。
同時に、変異獣がおぞましい雄叫びを上げる。あちらは皆、臨戦態勢に入ったようだ。
「……王族特務専任部隊、特命制圧班班長。木宮 優」
血の湖の中心で、同情なき眼差しで呟く優も、同じ。
「これより、排除行動を開始します」
言い終えた瞬間。
先頭の一体の首から上が、木っ端微塵に吹き飛んだ。
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