2章

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「それにしても、しばらく会わない内に、ずいぶんべっぴんさんになったッスねぇ。いやホントに」 「……?」 彼は何を言っているのだろう。脳が言葉を理解してくれない。 ただ、ゴンの眼差しに探るような色が混ざっていることだけは、明確に感じ取れた。 「川岸に倒れてるのを見つけた時は、もうダメかと思ったッスよ。なにせ全身血まみれで、体も冷たくなってたンスから。 あんな朝っぱらから、川で何してたンスか? カヌーなしで川下りッスか?」 「!」 軽いセリフの端々に配置された、いくつものキーワード。 それらを聞いてもなお、自分の身に起きたことを思い出せないほど、時音は間抜けではない。 ついでに、ゴンの不可解な言動の謎も解けた。 (そうじゃ……わしの体は今、成長してて……!) もう二度と、いつもの十歳前後の体に戻れなくなった。タナトスに限定空間を"死滅"させられたからだ。 戦いの結果、彼に敗北して重傷を負った。川に飛び込んで逃げようとしたが、寸前で巨大な火球をお見舞いされた。 しかし、何とか生き延びて下流に流れ着き、ゴンに助けられたのだろう。
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