2章

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何にせよ、いつまでも寝ているわけにはいかない。 「ぐ、ぅ……!」 骨から軋むような激痛に耐え、布団から這い出て立ち上がった。長い黒髪が、べったり背中に貼りついているような心地がする。 手足はもちろん、<メメントモリ>に引き裂かれた肩や胴にも、包帯が巻かれている。 その上に薄衣を着ている(ゴンが着替えさせてくれたのだろう)が、包帯の白は隠しきれていなかった。 「どこ行くンスか、そんな体で」 と、ゴンが静かに問いかけてくる。枕元に正座したまま、時音の方を見ようとする素振りすらない。 その落ち着きぶりが、ひどく癇に障った。テントを吹き飛ばすような剣幕で吠える。 「桜峰に決まっておろう!」 「無茶言わないでくださいッス。てか、あっしの質問の答えは?」 「後にせい!」 暴れる心臓。磨り減る声帯。 彼の言う通り、まだ安静にしなければならないようだが、動かずにはいられない。 ふらつく足で、出入口とおぼしき布の切れ目を、払う。 数百メートル向こう。ちょうど桜峰市との境辺りに。 何本もの大樹が、まるで壁のように立ち並び、稲木市の街並みを見下ろしていた。 「……」 思考回路が、完全に停止した。 先程までの呼吸困難も忘れ、いっぱいに見開いた目に、立ち塞がる森を収める。
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