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「なるほど~」
時音の話を聞いたゴンは、あぐらをかいたまま腕を組む。
彼には、メシアを始めとする全ての事情を語った。
下手に隠すと、かえって面倒だろうというのが第一の理由だが、溜まったものを吐き出したいという個人的な甘えも、ないわけではなかったのだ。
奇想天外にすぎる実情を、彼は黙って聞いてくれた。疑っているようにも見えない。
「……話しておいてなんじゃが、お主はこんな話を信じるのか?」
「商売だろうが人間関係だろうが、あっしは相手を信じるところから始めるんで」
布団に座って体を起こす時音に、えっへん、と胸を張るゴン。
しかし、すぐに照れ臭さと申し訳なさが混ざった顔になる。
「まあ正直、理解できてない部分が多いンスけど。現に"そうなってる"なら、納得するしかないッスよ」
「……そうか」
理解できなくても、現実を有りのままに受け止め、納得する度量。
理事長がゴンを一族に招き入れたのは、技術力はもちろん、彼のそういう一面も高く評価したからだろう。
「じゃあ、今度はあっしが話す番ッスね」
「ぱん」というより「ぽん」と手を叩いたキツネは、あぐらから正座に座り直す。
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