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直後。
大地を吹き飛ばし、鋼鉄の巨竜が立ち上がった。
「な……!」
思わず悲鳴じみた声を上げ、後ずさるオレの前で。
地面に埋もれていた鋼の竜は、生い茂る草木を根っこからひっくり返し、全身を露にする。
ギラギラと輝く装甲は、刀剣を組み合わせて作ったかのように鋭利だ。尖っていない部分を探す方が難しい。
めくれ上がった地面を後足で掴み、敢然と立つ竜の背中では、銀色の骨組みが機械的な音を立てて展開。
骨と骨の間に、赤と銀に煌めく神力を満たして、大きすぎる皮膜の翼へと変貌させた。
『フー……』
首から下と比べて、飾り気のない頭部。ぽっかり空いていた眼窩に真紅が灯る。目だ。
鋭い牙をわななかせ、喉の奥から空気を排出させる。ため息だろうか。
「ッ……」
『言ったよな。オレは自分の精神の姿──本性が嫌いだ、って』
双方の身長差は五メートル以上。
ビルを相手にするような心地で見上げるオレに、竜──フェルムが話しかけてくる。
こんな凶悪な面構えになってなお、発する声はオレと同じだ。
『これがオレの本性──オレという精神生命体の、存在の全てだ』
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