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「といっても、大まかな現状は、さっきお話しした通りッス。
『対応を協議』とは言ったッスけど、規模が想定外すぎて、お上もどうすりゃいいか分かってないような感じッスね」
「……二条院は?」
「突入に向けて、制圧部隊と救護部隊を編成中……なんて言えりゃ良かったンスけどねぇ」
本日初めて、ゴンが深いため息をつく。
時音も学園の関係者なので、彼の言いたいことはすぐに察することができた。
「保護者の問い合わせの対応で、それどころではないか」
「ちょっと様子を聞いたンスけど、ありゃひどいッスよ。特に貴族のお偉方」
基本的に軽いゴンの口調が、急に冷たさを増した。
「そりゃ子供が心配なのは分かるッスけどね。八つ当たりする暇があんなら、兵力なり財力なり提供してほしいッス」
「お主が言うことではなかろう」
「それはそうッスけど……あっしにだって思うところはあるッス」
口を尖らせるゴンを見て、時音は少し頬を緩める。
が、心の中は依然として暗い。今にも雨が降り出しそうな、曇天の空模様になっている。
ゴンに洗いざらい話しても、まったく好転しなかった。
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