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否、洗いざらいではない。
気持ちが沈む原因を、彼女はちゃんと分かっている。
(わしは……)
「朱鷺沢さん?」
不意に呼びかけられ、はっと我に返る。ゴンの細い両目が、心配そうに覗き込んできた。
「やっぱりまだ痛むッスか? めっちゃ怖い顔してるッスよ?」
「……いや、大丈夫じゃ」
嘘だ。しかし話してどうこうしてもらうことではない。政府ではないが、これからのことを話し合う方が先決だ。
気を取り直し、顔も引き締め、切り出そうとした直後、
「……みんなに黙って一人で決闘したこと、気にしてンスか?」
ゴンが静かに尋ねてきた。無意識に閉口する。
それを肯定と捉えてか、彼は細い吐息をついて、少々厳しい声になった。
「勝手に動いたのは、確かに反省するべきだと思うッス。でも後悔するのは間違いッスよ」
「……」
「朱鷺沢さんは朱鷺沢さんの、譲れないモン守ろうとしただけッス。誰にも否定なんて……」
「そうではない!」
我慢できず、咆哮する。
途端に咳き込み、めまいと喉の痛みに襲われるが、倒れることも、ゴンの手を借りることもなかった。
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