2章

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息苦しい沈黙は、しばらくテントの内側をさ迷ったが、 「『あの子は、きっと生きている。どこかで戦っている』」 不意に、ゴンがいつもと違う口調で切り出した。 「『なら、私も生きるために戦わなければならない。あの子に見られて恥ずかしくないよう、全力で誰かを守らなければならない』」 「……」 「……理事長さんのことッスから、こんなこと考えてんじゃないンスか。たぶん」 言葉に詰まる時音に、彼はなだらかな肩をすくめて苦笑する。 口調も仕草も軽かったが、先程とは打って変わって、慈愛に満ちた眼差しだ。 「あの人がそう思ってくれてんなら、少なくともその間は、朱鷺沢さんは一人じゃないッス」 そう言って、風呂敷包みに手を突っ込む。 やがて取り出したのは、陶器製とおぼしきビン。長さも太さも小指ほどしかない、小さなものだ。 「だから、朱鷺沢さんも……理事長さんを本当に一人ぼっちにしないでほしいッス」 それを、包帯で覆われた時音の手に握らせて、ゴンは微笑んだ。 「一人ぼっちは……辛いッスから」 とびきり悲しそうな──孤独であることの辛さを知っている者の、笑みだった。
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