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2章
自分を憎んで生きるのは、とても辛いことだ。
だって、心は肉体から離れられない。憎むべき敵の中から、恨むべき体を使うしかない日常など、地獄以外の何物でもないだろう。
そんなことをしていては、いつか心が死ぬ。
司令塔たる心がいなくなれば、やがて体も果てる。
連鎖的な滅びの後には、文字通り何も残らない。
オレは、そうならなかった。
だから、たぶんオレは、本当は自分を憎んでなんていなかったのだと思う。
彼女を助けられなかった弱さを嘆き、右手に巣食う火傷に苦しんで、それでも自分自身を嫌わなかった。
オレは、心のどこかで。
彼女に「好き」と言ってもらえた自分を、ちゃんと好きでいられたのだ。
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