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「さ、さむい…」
田舎にいる私達の通学路は、朝かなり寒い。
なのに、今日は手袋を忘れたという悲劇。
公立、立町(たてまち)高校。
真っ黒な髪に、芯の通った髪質。
そこら辺で、バスでも待っていそうなどこから見ても平凡な私。
私は、立町高校に通う学生の1人。
1年生の前半は、毎日がつまらなく感じていた。
クラスメートとくだらない日常の会話をして、ただ笑って、催し物の話しをしては、また笑った。
普通に過ぎていくその日常がどうしても好きになれなかった。
そんな日常を、ある人が変えてくれた。
通学路を歩く先には、癖がついてそうなふわふわとした茶髪。
「潤くーん!」
真っ先に、大好きな彼だと分かり、後ろから背中を叩いた。
「わ…っ!」
慌てる姿もこれまた可愛い彼の名前は、伊波 潤(いなみ じゅん)くん。
私の1コ上の先輩で、2年生だ。
「おはよう!」
元気良く挨拶すると、潤くんも「おはよ」と優しく笑ってくれる。
朝、潤くんを見れるだけで今日1日が輝き出す。
潤くんとは、夏に出会って、お付き合いを始めた。
今はもう12月の上旬で、潤くんとも6ヶ月くらいの付き合いになる。
最初は委員会が同じだという関係だったけど……気が付けば…って、また今度思い出を振り返ろう。
「昨日宿題のことで電話してきたけど、解った?」
潤くんが、当たり前のように手袋を履いてない私の手を握る。
「う、ううう、うう、ううう、ううん…!わ、わか…わかんなかった!」
私は、その行動にまだ慣れてなくて、必ず動揺してしまう。
「“う”多すぎ」
柔らかく笑われて、また私の心臓が飛び跳ねる。
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