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「鏡の世界を入れ替えるには、どうしたらいいんだ?」
気がつくと僕は青年にそう尋ねていた。
あの少女が憎いんだ。
僕を身代わりにしていることなど露知らず、笑顔で幸せな、彼女が。
ーー彼女が、僕のような運命を辿ればいいんだ。
僕の決意の表情を見て、青年はニヤリと笑った。
「鏡を壊せ。そうすれば少女はこの塔に閉じ込められ、お前は城で裕福に暮らせる。ただし」
青年は人差し指を立てた。
「君のこれまでの記憶は消される。少女の記憶はーーわからないが、消えるかもしれない」
構わない。
これまでの記憶なんていらない。
こんな悲しい記憶なら、いらない。
「なら、思う存分、鏡を壊すがいい」
僕は青年の言葉を引き金に鏡を壊し始めた。
バリーン!!
近くにあった斧で思い切り鏡を割ると、破片が飛び散った。
しかし、それらは僕に当たらず、綺麗な弧を描いて落ちていく。
やがて鏡は原型を失った。
「割ったよ」
僕が後ろへ振り向くと青年はすでにいなかった。
僕の記憶はそこで途絶えた。
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