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まだやることがある。今やらなきゃいけないことがある。
涼はここまで来た道のりとは逆に進んでいく。下駄箱を抜け、階段を二段飛ばして駆け上がる。途中、段を踏み外してずっこけそうにもなるが、そんなのは関係ない。
そして、到着。
ドアを静かに開ける。
そこには見知ったクラスメイトが何人も存在していて、その中に用のある人物を見つけ出す。
栗瀬 咲である。
涼は彼女の座る机へと近づいていくが、向こうはまるで関心を持たない。
でも、そんなのは関係ない。
涼は生唾を呑み込み、こう言った。
「ごめん!栗瀬!」
「………なんのこと?」
虚ろな怒りの目で睨んでくる栗瀬。
わかってはいたんだけどな。
「さっき叩いたこと。やり過ぎた。でも、お前、勘違いしてんだって」
「勘違い?」
「オレだって都市伝説が怖い。真っ正面から対峙したいなんて、さらさら思わねーし。でもそれ以上に助けてやりたい。さっきも都市伝説と戦ったんだ。悪い奴だった。でも、ずっと悔しがってた。何でも持ってる奴が羨ましかったんだ。都市伝説だって、人の心を持ってる」
「そう………」
「でも、確かに怖いよ。オレ、強がってたから、怖がってるお前とオレが重なって見えて嫌だった。だから、オレが何をすべきか見えたよ」
涼は真剣な眼差しを向ける。
それに応えてくれたのか、栗瀬は立ち上がって、涼の目の前に立って向き合った。
涼は深呼吸をした。
「オレ、絶対お前を護るよ。いつかまた、栗瀬の力が必要になる時があるかもしれない。その時は、オレが絶対に護るから」
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