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→→→「………ただいま」
元気をすっかり無くした声が玄関に響く。
小研 京子は、自分を責め続けていた。
涼に言われたことも案外当たっている。
だからどうにも立ち直れない。
京子は思い足取りで自室へと向かい、カバンを丁寧に机の上に置いた。鏡を見ると、やつれた女の子が写り込む。長く伸びた黒っぽい紫の髪の毛が、傷んでいるように見えなくもない。
ああ、情けがないよね。
これじゃ姉の面子丸つぶれだ。
京子は気を引き締めて、キッと鏡の中の自分を睨む。
そしてリビングへ向かう。
夕飯作らなきゃ。
「久しぶりだと慣れねーな」
「へたくそ涼」
「うるさいな。この料理だけなら姉ちゃんに負けるとも劣らないと自負してんだ」
いつか見たような景色が見えたので、ついつい呟いてしまった。
「涼…………?」
「お、姉ちゃんおかえり。今日はオレが夕飯作るから。…………それとごめん」
「え?」
「オレ、相崎と話したよ。アイツ、友達の夢の為に、最優先事項を忘れてただけだった。姉ちゃんは悪くないし、むしろあんな友達思いの奴を育てられるなんて、なんだかうらやましいよ」
涼の口から出てきた予想外の言葉。京子はいつの間にか笑顔になっていた。
「涼もきっと、そうなれるよ」
「だと………いいな」
涼もちょっとだけ笑っていた。
「ところで、その料理………」
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