61人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱ覚えてた?子どものころよくケンカしたよな。その度に、母さんがオレと姉ちゃんの好物を出してきたんだよな」
「練習してたの?ずいぶん上手くなったね」
「姉ちゃんといつか一緒に作れたらなって、小さいころ思ってたんだ。『ハンバーグ』」
涼は小さく笑って、京子も笑って。
涼はこのひと時がたまらなく嬉しかった。
「涼。ハンバーグこげてるよ」
「あああああしまったぁぁぁぁぁ!!!!!もーちょい早く言ってくれよメイア!!!」
「ハイ、これが姉より上手いと噂の涼ハンバーグですね!」
「お前初めっからそのつもりかこの野郎!!!!!」
京子はすでに炭になりかけの四つのハンバーグに、自分と涼、父と母を重ね合わせていた。
「涼も私も元気だよお母さん、お父さん」
京子はハンバーグをひとつまみ。
千切って食べてみたが、コレはとても食えたものじゃない。
ちょっとした冷や汗をかきながら、あえて何も言わないことにした。
「まあ、もうちょっとかな」
メイアを追い回す涼には聞こえない声で、京子はそっと呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!