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「はっ…?」
「何、聞こえなかったか?ならもう一度……」
「いやいやいや…いや…。アンタ何言ってんの…?所長…?」
部屋には少年と少し年の行った男。一般的に言われるおっさん、と言う人種の二人がいる。どうやらこの少年、おっさんの言った事が理解できなかったようだ。
「嫌も何も、お前は今年で16になるだろう?だからお前にも青春、と言う物を味わって欲しくてな。
近くの高校に入学できるよう手配してやったんだよ。」
おっさんは少年に対する親心を持って高校に通わせたいのだろう。ここに通わせることでもっと人に触れさせたいという考えから。しかしこの少年、この計らいを快く思っていない様子。
「馬鹿じゃねえの?何で俺がそんな所に通う必要があるんだよ、メンドくさい……
大体なあ、俺には任務と言う重大な お・し・ご・と があるからそんな所に行く暇はない。」
「そんな事言ったって、いつも任務は渋々出てるだけじゃないか。」
この二人の会話に出てくる任務、とは文字通りそれを生業としている者達の仕事だ。
そしてこの二人が所属しているのは警察組織の代わりに発足された組織 Versus Ability Holder(対能力保持者)通称VAH。
「お前にはもっと有意義な人生を過ごしてもらいたいんだ。」
「ふん、そんな所に通うよりちくわ食ってる方がよっぽど有意義だね。」
ちくわと学校を秤に掛ける辺り、彼の嫌と言う気持ちは相当なものと窺える。
「そんな事言うなよ。それに、もう決定事項だ。頼む、通ってくれよ!」
おっさんの必死に頼み込む姿を見ても首を縦に振らない。それどころかおっさんは少年の足にすがりつく始末。
「嫌なもんは嫌だ。俺は面倒なことが嫌いだってのは育ての親であるアンタが一番よく知っているはずだ。違うか?」
「ぐぬぬ……。そこまで言うか……。ならば……」
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