欠片と自己中とプロローグ

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「ふっ『何なんだお前は』……か。いずれ表の住人が我々を認識せざるおえない時が来るだろう。……ただしここで消えるお前は知ることはないがな」 「何を意味不明なことを……」  ちくしょう……。既に限界を越えていた足はピクリとも動いてくれない。立っていることすら困難だ。回復して走り出せるまでの時間を稼ごうとしたが、思惑とは裏腹にジリジリと距離が迫ってくる。 「もう終わりにしよう」   そう言ったシャーロと呼ばれていた男は赤いオーラを纏わせた腕を横凪に払う。  再び『轟』っと、低い重低音が全身を駆け巡る。そして瞬く間に周り全てを炎で囲まれた。  しまった……。まさか、燃やすものがない河川敷でもこの規模の魔術が発現できるなんて。    公園を脱出した時のように突っ込んで突破は多分無理だな。見た目で炎の密度の違いがわかる。次は軽い火傷程度では済まないだろう。  ここから逃げ出すのは不可能だと、判断した俺は静かにリーネを地面へ寝かせる。魔術の発現タイミングはだいたい掴んでいる。あとは足が動けば……。 「お前はよくやった。何の素質もないただの一般人が本気でなかったとは言え二時間も私から逃げ続けれたのだ。ーーさあ、ここがお前の人生の幕引き場だ」    俺に向けられた手に赤い光が収縮されていく。  くそっ! 動けよ! 俺の『人生』(シナリオ)がここで終ってたまるか! こんなバットエンドな主役の幕引きなんてありえない! 俺は……俺はっ! 「炎が成すのは裁きの剣。その炎を持って罪人を滅却せよ【断罪剣(ジャッジメント)】」  立ち尽くすことしかできない俺に向かって触れたもの全てを灰に変える炎の剣が放たれた。
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