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「あー……えーと」
覚える必要はないと思って名前を聞き流したのが悪かった。いざ話しかけるとなると少々不便だ。まぁ、こんな幸せ勘違い脳女なんか『お前』で十分だろ。
「お前って――」
「お前じゃない。リーネ・イヴ・リリス。覚えきれないならリーネでいい。不本意だけど」
ぐっ。この女……。心底腹が立つがまぁいい。どうせ勘違いを訂正すればさよならだ、話しを先に進めよう。
「じゃあ、リーネ。リーネは家出でもしているのか?」
家出ならそんなタンスまで背負って随分意気込みを感じる家出だな。
「家出? ……ああ、確か『事情があってそこに住んでいられず、誰にも行き先を告げずに人目の無い夜中に他の場所へ移ること』だったっけ?」
「それは夜逃げだ」
確かにいまは深夜だが。しかし、家出も分からないとは……。まぁ容姿からして日本人ではないよな。
「~~っ!! まだこっち側のことはあんまり分からないの!! それで結局私に何か用!? 私はあんたにかまってるほど暇じゃないの!!」
意味の取り間違いを指摘すると真っ赤に悔しそうに表情を歪ませる。その悔しさが相乗効果を生んだのか続いた言葉にも迫力がこもっていた。
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