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「いや用って程じゃない。ただこんな夜中に女の子が一人で居ると危ないと教えようかと」
幸せ勘違い脳を覚ますにはもっともらしい理由を作って『この男はナンパ目的で話しかけてきたんじゃない』と本人に自覚させてやるのが一番だ。
「え!? も、もしかして……心配してくれてるの?」
さっきとはまた違う感じで赤面するリーネ。なんだ? 照れてるのか?
そんでもって俺が心配している? 俺が他人を?
「まさか。ただ単にこの場所はよく使うから事件を起こされて通行止めとかになったら俺が困るから忠告しただけ」
ここはよく利用する近道。こんな所で暴行事件なんて起こされたらたまったものじゃない。見た目は良いのだから気をつけた方がいいと忠告しとく。
それに他人が起こした事件のせいで俺が回り道をしないといけないなんて論外だからな。
「はぁ……。こう言うのを自己中って言う――っ!!」
リーネはため息混じりの言葉の途中で突然絶句する。呆れ顔だった表情が一瞬にして強張っているのが見てわかる。
「ん? どうし――」
「隠れて!!」
リーネから肩を軽く押されただけで、二メートルは後ろにあった茂みの奥へと突き飛ばされた。
突然の離陸に思考が停止、気づけば不様に地面へ不時着していた。
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