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「避けなさいよ!!」
その怒涛と共に普通の人間には出せないような速度で炎槍と俺の間に割り込んできたリーネにまた肩を押された。
さっきと違う所は押す力が込もってないことと、その直後爆発の炸裂音が聞こえたことだ。
体勢を立て直した俺の視界に映ったのは煙を掻き分け膝から崩れ落ちるように倒れるリーネ。
「リーネ!!」
「私はいい、から。逃げなさい。あいつの目的は、私、だか……ら」
そのままリーネは糸が切れた操り人形のごとく体全体から力が抜け気を失った。
「おい!!」
なんで俺を庇ったりなんか……。あんなに速く動けるなら俺に集中している間に逃げることだってできたのに。
くそっ。俺を庇ってこんなになったお前を置いて逃げるなんてできるか! 俺は自分でも認める自己中主義だが、自分を庇って倒れた相手を見捨てて逃げる外道役なんてまっぴらごめんだ。
俺は常に主役であって、俺に関わったやつはこんな勘違い幸せ脳女でもみんなハッピーエンドを迎える。これが俺の『人生』(シナリオ)だからな。
「お前が足枷になってくれたお陰で一番の手間が省けた。さて、今度こそ――」
「うるさい!」
近くにあった金網のゴミ箱を声の聞こえる虚空へ投げつける。俺が足枷? ふざけんじゃねーぞ。
「無駄なこと……。炎よ。触れたものを融解させる壁を具現せよ【フレア・ウォール】」
何もない空間に炎の壁が出現し、ゴミ箱の進行を阻む。炎に触れた金網のゴミ箱は徐々に速さを増しながら融解していく。
俺は、ゴミ箱が融解しきる前にリーネを背負い公園の出口を囲う炎の中へと飛び込んだ。
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