137人が本棚に入れています
本棚に追加
何処となく棘のある言葉を投げかけたのは、歯ブラシを咥えている妹の結(ゆい)。身長が高く感じたのは気のせいではなく、昨日までよりも小さく見える。
が、態度は昨日までより大きく……至極不機嫌そうな顔でこちらを見る。
「ごめん――」
「別にいいけど」
そのまま口を濯ぎ、こちらには構うことなく洗面所から去っていく。
今までそこまで仲が悪かった訳ではなく、かと言ってべったり仲良しでもなく。
普通の姉妹だと思っていたが、ここまで冷たくあしらわれた事は無い。
本当に、どうなっているんだろう。
見えるものは自分と自分の部屋を除けば一緒なのに、全く違う世界に来てしまったかの様で――混乱しそうになる。
と言うよりも、既に混乱している。
「晶、いい加減に用意しないと遅れるわよ?」
状況がいまいち掴めないまま、呆然と鏡を見つめていると母が声を掛けてくる。
最初のコメントを投稿しよう!