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「あ……うん」
「熱でもあるの?」
心配そうな顔をして、こちらを見る。
いっそのこと、全て”発熱のせい”という事にでもしてしまえたら良いのに、そんな都合良く行くはずもなく、身体がだるい事もない。
もしかしたらこれは夢なのかも――頬を思いっきり抓ってみてもやっぱり、それ相応の痛みが走るだけ。
「……あんた、本当に大丈夫?」
半ば呆れ顔の母を相手に、笑って誤魔化すくらいしか思い付かない。
「ちょっと駄目かも」
たぶん、いや、本気で駄目だろう。
何がと言われたら、今自分に起きている状況の全てが。心配した母が、額に手を当てる。
「熱は――無いみたいね。具合悪く無いんだったら馬鹿な事言ってないで、さっさと用意して学校行きなさいよ。遅刻しても知らないんだから」
小さく溜息をつき、背中を向ける。そんな母の後姿を見た後、時計を見ると、既に家を出るべき時間になっていた。
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