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「先生ぇ!さようなら!」
「ああ、真っ直ぐ帰るんだぞ」
教室を出ていく子供たちを見送り、慧音は一息ついた。
教材を纏め、ふっと天井を観れば薄く広がる染みが見え顔をしかめた。
だが、直ぐに思い直したように荷物を持ち控え室へ向かう。
「今日だったな」
玄さんが話していた外来人の男性。一月前にふと現れ、そのまま人里に住むようなった人物。会ったことはないが、話だけなら聞いたことがある。
曰く、真面目である。
曰く、変人である。
曰く、鬼である。
曰く、妖怪である。
他にも様々な噂は聞くが、どれも確証がないモノばかり。
ただ評価は割りと高いようだ。
変なことを聞くときも、皆さも可笑しそうに話す。
「悪人ではないか」
そもそもそうであるなら玄さんが紹介するわけがない。
ふふっと笑い、教材を棚しまう。
「ごめんください」
戸を開ける音と共に聞き慣れない声が届いた。
どうやら件の彼が来たようだ。
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