人を愛す妖怪の教師

2/15
前へ
/87ページ
次へ
「先生ぇ!さようなら!」 「ああ、真っ直ぐ帰るんだぞ」 教室を出ていく子供たちを見送り、慧音は一息ついた。 教材を纏め、ふっと天井を観れば薄く広がる染みが見え顔をしかめた。 だが、直ぐに思い直したように荷物を持ち控え室へ向かう。 「今日だったな」 玄さんが話していた外来人の男性。一月前にふと現れ、そのまま人里に住むようなった人物。会ったことはないが、話だけなら聞いたことがある。 曰く、真面目である。 曰く、変人である。 曰く、鬼である。 曰く、妖怪である。 他にも様々な噂は聞くが、どれも確証がないモノばかり。 ただ評価は割りと高いようだ。 変なことを聞くときも、皆さも可笑しそうに話す。 「悪人ではないか」 そもそもそうであるなら玄さんが紹介するわけがない。 ふふっと笑い、教材を棚しまう。 「ごめんください」 戸を開ける音と共に聞き慣れない声が届いた。 どうやら件の彼が来たようだ。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加