人を愛す妖怪の教師

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今日の日差しはやけに強い。 白人系のマルコには少し堪えるモノがあった。 「日本は四季の区別があるはずなんだが……」 ワイシャツの襟を少し開け、額に滲む汗を拭う。 昨日は涼しく、外での作業もまったく苦になることはなかった。 何かの前兆かもしれない そんなことを考えながら、止まっていた手を動かす。 作業は順調に進んでいる。 範囲はある程度あるものの傷みはそれほど酷いものではなく、取り敢えず補強しておけば何とかなる程度だった。 「そういえば、大工作業なんぞいつ以来だ……。前世…いや、二世代前か……」 そんなどうでもいいことを考えながら釘を打ち付ける。 彼の記憶通りならば、マルコは数十回を超えこの世に生を受けている。 幾つもの国や地域を周り尽くし、行くところ無くしてからの人生は、様々な挑戦の道だった。 スポーツや武道、宗教、民俗、歴史、軍などのいたる事を体験した。結局は身体を動かすことは性に会わなかったようだが。 そんな感じでやることを失いつつあった彼は、態度には出さないが、ここに渡ったことに感謝すらしていた。
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