人を愛す妖怪の教師

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瞳を閉じ今までを思い出すように静かに語る。 「長く生きていると多くの人を観る事になるんです。外来人は勿論、善人、悪人、有能、無能、行動する者、しない者、老若男女問わず数多の人を、です。そうして見続け、接し続けるうちに何となくですが『人』がわかるようになってきたんです。どういった人生を歩んで来たか、行くか。どんな性格なのか。色々とです。私がこうして寺子屋を開いているのは子供たちに学を学ばせたいというのもありますが、間違う事を、後悔する事をなるべくさせないように、そう思ったからです」 そこで一呼吸付け、マルコを見る慧音。 哀愁、愛情、後悔、希望……、隠されているがその瞳にはそんなものがあるように見えた。 しかし、それらはすぐに失せ、かわりに好奇の色が出る。 「だから私は、マルコさん貴方を不思議に感じるんですよ。貴方は見た目こそお若い。しかし、中身はどうも違って観えてしまう。いや、決して若くないと言っているわけではないんです。熟練された芯の強さ、猛々しさ、品、知を感じます。それはもう、不相応な程に」 「だから気になった、ですか?」 「ええ、その通りです」
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