人里

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「ほう、なるほど!ではこの人里以外に集落は無いのですな」 二十代半ばを過ぎた男が、さも楽しそうに老人の話を聴いていた。 男の名はマルコ=エンヴィンツ。他にも幾つか名は有るが彼が名乗ることは恐らくもうない。 彼は幾度となく世界に甦り、そして死ぬ。死後、魂だけを自身の血脈に乗せ、幾度となくなくこの世に舞い戻ってきているのだ。何故その様なことが起きているかは、彼自身も知らぬところである。 今の容姿は混血に混血を重ね、白人より黄色人に近い。名残があるなら、それは白い肌と薄茶の髪に少し高くスッと伸びた鼻筋だろうか。 「ワシが産まれるずっと前はいくつもあったらしいが、妖怪に襲われ壊滅。生き残った人々が集まり、今の人里の基を作ったようじゃ」 「なるほど、なるほど。それはだいたいいつぐらいか分かりますかな?」 マルコの質問に老人は一頻り唸ると軽く肩を竦めた。
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