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実の所、彼はまだ幻想郷の実力者と言われるもの達に会っていない。まずは下から。地盤を固め、ゆっくりと聴いて回ろうと思っている。
というのも、ここは今まで彼が旅をしてきた世界と全く異なる世界。護りが固められた人里ならいざ知らず、一歩踏み出せばそこは異常が蔓延る死地。何百年の経験があろうと、一切通じる事はない。そう結論をつけ、今に至っている。
常に安全と安定を導き進む。それが彼が身に付けた能力。非力で強力な経験の力だ。
「マルコさん」
「今度はなんですか?」
マルコが畑を半分程耕し終えた時、再び老人がぽつりと呟いた。
「そういえば、寺子屋の屋根が痛んでるそうでね」
「はぁ……」
脈絡のない話に作業を止め、マルコは顔をそちらに向けた。
「ワシがやる約束を受けておるんだが、最近どうも腰の調子が悪くてね。かわりにやっていただけませんかね?」
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