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「ただいま」
夕刻
日が沈み、世界が闇に包まれる前にマルコは家へと戻った。
夜は極力外へ出てはいけない。ここで暮らす人々の鉄則である。
「ふむ、じいさんに借りができてしまった」
土産としてもらった干物を起きながらマルコは思う。
もともとあの老人が頼まれていたのは確かだろう。だが、腰が悪いと言うのは嘘だ。
帰り際に魅せた笑みと身のこなし。全く感じさせることはなかった。
「機会を頂いたということ。感謝をせねばな」
人里の実力者――上白沢慧音。寺子屋を開き、教師として鞭を振るう人物だ。
話は聞いているし、数度姿を見かけた事があったが、会う事は初めてであった。
会う事じたいなら然程難しくない人物であるが、話すとなると別。ここの人々からするとマルコは『外来人』と呼ばれる。
原住民は外の人間に厳しく、長ならことさらである。
彼の経験から謂える事。
だから彼は先ずは周りの信頼を得ようとした。
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