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血でできた水溜まり。
その中心に存在する恰幅(かっぷく)のいい体の男性。
顔を見なくても分かる…。
あれは間違いなく───
「き、君嶋先生………!」
こんなの……こんなのって……。
俺は震える手を必死に動かし、スマホを取り出す。
そして1、1、0の順に押し、警察に電話した。
普通なら先に救急車を呼ぶかもしれない。
でも俺には何となく分かった。
『これはもう手遅れだ』、と。
ドラマに出てくる程度の血の量じゃない。
それは、素人目にも明らかで一目で分かる程の大量の出血。
それを見た瞬間に、生死を確かめるまでもないと悟った。
だからまずは警察に連絡。
震える手、震える声で必死に電話先の相手に見たままの光景を伝えた。
これ以上は俺に出来ることも、することもない。
動かない体。それでも懸命に芋虫みたいになりながら玄関へ向かう。
後は警察に全て任せよう。
それが今、俺にできること全てだった。
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