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『ピチャッ……ピチャッ……』と、トロフィーに付いた血が規則正しい音を立てながら床に落ちる。
「まだ、やらなきゃ。」
犯人はトロフィーを床に捨て、動き始めた。
その手には黒革の手袋。
それは指紋が付着しない為の工作だろう。
次に犯人はポケットからハンカチを取り出した。
そして自分がここに来てから触ったであろう場所を丁寧に拭き始める。
凶器、テーブル、ドアノブ、触った場所全てを思い出しながらゆっくりと確実にに。
それは、自らの指紋を拭き取る作業。
最初から手袋をしていると、被害者に怪しまれることを懸念したからかもしれない。
そう、犯人はここに来た時には手袋などしていなかった。
そして今、自らが先程付けた証拠(しもん)を消しているのだ。
「ふぅ…これで。」
今日、自分が触った部分は綺麗にした。と確信した。
文字通り、払拭したのだ。
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