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タウンがオレンジ色の幻想的な風景に染色されていく夕刻のこと。
時計台から見える美しい風景に魅了される二人の男女が居た。
金色で指通りの良い髪に、深紅の瞳のまだあどけなさが残る青年の名はノラ。
年は18歳で華奢な体型だ。
そして絹糸のような白髪を腰まで垂れ流し、蒼海の瞳に毅然とした面差しの娘の名はグレン。
年は19歳。
二年前、人口一万にも満たないこのサンタウンにアロカリア国スコートルの街からノラが家族共々引っ越してきた。
理由は父親の仕事の都合―――いわゆる転勤というやつだ。
タウンのシンボルである時計台にノラが上った際にグレンと出会い、二人は意気投合。
今では二人がお気に入りの時計台で毎日のように顔を合わせていた。
二人には他にも友人が居るが、その中でもお互いが特に特別な存在だった。
お互い恋愛感情など一切抱いていない。
友達、だ。
とても大切な友達。
他の人間が相手なら居心地悪い沈黙も、二人で作り出す沈黙なら心地良いと思える唯一の存在だ。
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