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「うわあああああっ!!」
状況が理解出来なくても、悲鳴は自然と口から零れ出るものだ。
端から見たらノラの姿は空を飛んでいるように映るのだろうが、その姿を目撃する者は誰一人として居ない。
困惑するノラをよそに、体は雲を突き抜け、瑠璃色の空へぐんぐん落ちていく。
非現実的な状況を前に、ノラの思考は停止したまま未だ作動しない状態。
冷たい夜気が肌を撫で付けていく中、ノラは遠のいていくサンタウンを無力に見つめるしかなかった。
ほんの一瞬だけ作動した思考を駆け巡ったのは不吉な言葉。
もう帰れない―――――
ノラは胸中を侵略していく暗雲に身を任せ、瞼を閉じた。
手の中のクリスタルをきつく握り締めて。
薄い瞼の裏にグレンの姿が浮かんだ。
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