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「なんだぁ席、空いてるじゃん。」
先ほどまでの無表情からは想像できない程の笑顔を浮かべて、勢いよく荷物のおかれている通路側の席へ腰を降ろした。
もちろん荷物の上に勢い良く…。
グシャ
「あおー!!テメェ何してくれてんだ!!」
不良の荷物は潰れて、おそらく中に入っているものは、見たよりずっと酷いことになっているだろう。
不良は顔を真っ赤にして怒りを露にした、その大き過ぎる声に車内の目線がその四人席に集まった。
不良はそんなこと気にせず、私の胸ぐらを掴んだ。
私は笑顔のまま不良を見つめた、璃子も変わらず無表情なまま不良を見つめている。
「バックには人権なんか無いよ。」
「はぁ?なにいってんだ。」
私は捲し立てるように喋り続けた。
「席に座る権利を持つのは生きているものだ、感情も意見も持たない、生きていないバックはただの道具に過ぎない。道具と生きている者を''はかり''にかければどちらが大事かなんて小学生だって分かる。」
不良はあまりに笑顔で淡々と話す私から、何かを感じ取ったのか、一瞬怯えたように顔をしかめたが、
おそらく彼のプライドが意地を張ったのだろう。また大きく口を開けて息を吸った。
誰もが怒鳴ると察した。
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