その1

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 始まりは、アイラが夕食を済ませてテレビを見ている時だった。  フラットの電話が鳴り、自分のインターネットに集中しているピートは全く電話など聞こえない。  それで、アイラがカウチから立ち上がって、キッチンのカウンターのところに歩いていった。 『もしも~し』 『アイラ、久しぶり』  その声を聞いて、アイラはほんの一瞬首を傾げ、それで、その顔がその声を思い出したようにパッと変わる。 『Hey、レン。久しぶり』 『久しぶり』 『そうね。どうしたのよ。こんな地球の果てに電話かけてくるなんて。――今、そっち何時?』 『1日遅れの朝だよ』  へえ、と相槌を返すアイラは、カウンターの前の小さな丸椅子を引いて、そこに座りなおすようにした。 『それで、なに?わざわざアメリカから電話かけてくるなんて。大した用なんでしょう?』 『ただの日常会話でもしようかと思ったんだけど』 『嘘つきね、相変わらず。わざわざそっちからかけてくるんだから、用はなに?』  相変わらず、要点をスバスバと突きつけてくるアイラは簡潔である。
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