その1

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 それで、電話の向こうの廉も、うん、と言って、次の言葉を出した。 『龍ちゃんが、クリスマスにマレーシアのリゾート地に行くと――』 『そうね』 『割引がきいて安くなるから、クリスマスとお正月をそこで――』 『そうねん』 『アイラの親戚が集まるから、と言う話も聞いていて』 『そうよ。私のおばあちゃまの80歳の誕生日のお祝いもかねてね』 『誕生日はいつ?』 『誕生日は、今年の初めよ。でも、皆で揃ってお祝いする機会がなかったから、クリスマスを兼ねて、そこでお祝いね』 『そうか。いいね』 『そうよぉ』  その予定を考えるだけでも、アイラの顔が満面の笑みに変わっていく。 『私の知り合いが、予約の手筈とか全部任されてるの。それで、ディスカウントがかなりきいて、格安よー』 『へえ、それはいいな』 『そうよ』 『いつ、マレーシアに発つんだ?』 『一応、全員集合はクリスマスイブまでだから、その間に島に到着すればいいのよ。でも、私は1~2日早く行って、ちょっと買い物の済ませなくちゃね。せっかくの余暇よ、リゾート地で。買い物があるのよ』 『そうか』
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